ドローン飛行に関するルール(許可・承認・免許)について

青空とドローン

いまや完全に市民権を獲得した感のあるドローンですが、意外に多いのが「ドローンを飛ばす時に必要な資格や許可ってあるの?」というような疑問です。恐らくここにたどりついた方の中には、「興味はあるんだけど手続きがいまいちよく分からない」なんていう方も多いのではないかと思います。

そこで本稿では、ドローン初心者の皆さまを対象に、ドローンを操縦する際に必要となる資格や手続きなどの基礎知識について詳しく解説していきたいと思います。

ドローンとは

ドローンとは、遠隔操作や自動制御によって飛行させ、空撮、点検又は捜索などをすることができる無人航空機の総称です。気軽に飛ばせるトイドローンから軍事用ドローンまで、その種類は実に多く活用方法も様々です。

日本では自動車でいうところの運転免許に該当するドローンを飛行させるための資格や免許は存在しないため、基本的には誰でも簡単にドローンを楽しむことができます。ただし、後述する許可又は承認を取得しようとする際には、無人航空機操縦者技能証明書の交付を受けていることが要件あるいは推奨条件となっています。

また、FPVなどの5GHz帯の電波を利用する際は、オペレーターによる「第四級アマチュア無線技士」以上の資格と、使用するドローンに対して無線局開局の承認を取得する必要があります。更に業務用途で5GHz帯などの電波を使用する場合は「第三級陸上特殊無線技士」の資格を取得する必要があります。

ドローンの飛行ルール

ドローンの飛行については、航空法小型無人機等飛行禁止法道路交通法(第77条)電波法民法(第207条)都道府県条例及び市町村条例といった法令が関連しています。

無人航空機の定義

航空法に基づく規制対象となる無人航空機は、飛行機、回転翼航空機、滑空機又は飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものとされています。

これにはドローン(マルチコプター)のほかにラジコン機及び農薬散布用ヘリコプター等が該当しますが、これらのうち100g未満の重量のものについては無人航空機の定義からは除外されているため、航空法による規制の対象外となります。

2022年5月までは、規制対象となるドローンの総重量は200g以上とされていましたが、現在は100g以上へと引き下げられています。また、ドローンを飛行させるには、所有者の氏名や住所並びに使用するドローンの種類及び型式などをネットで事前登録することが義務付けられるようになり、自動車のナンバープレートと同様に個々でID(登録記号)を取得し、IDが印刷されたシールをドローンに貼り付ける制度も導入されています。

飛行禁止区域

ドローンの飛行が禁止されている区域は以下のとおりですが、このうち赤文字が航空法による規制、青文字が小型無人機等飛行禁止法による規制、緑文字が条例による規制になります。

  • 空港周辺
  • 緊急用務空域
  • 150m以上の上空
  • 人家の密集地域
  • 対象施設周囲約300m以内の地域
    • 国会議事堂
    • 内閣総理大臣官邸
    • その他の国の重要な施設等
    • 外国公館等
    • 原子力事業所
  • 条例による飛行禁止区域

飛行の方法

ドローンの飛行方法には以下のようなルールが設けられています。後述しますが、赤文字の方法で飛行を行う場合には航空法に基づく承認が必要となります。

  • 飲酒時の飛行禁止
  • 飛行前確認
  • 衝突予防
  • 危険飛行の禁止
  • 夜間飛行の禁止
  • 目視外飛行の禁止
  • 人や建物との距離30m未満での飛行禁止
  • 催し場所での飛行の禁止
  • 危険物輸送の禁止
  • 物件投下の禁止

道路交通法による規制

道路内や路側帯などからドローンを離発着させる場合や、車両の通行に影響を及ぼすような低空飛行をする場合には、道路において工事若しくは作業をしようとする者として道路使用許可を受ける必要があります。

電波法による規制

電波法では、国内で使用する電波を発する機器について特定無線設備の技術基準適合証明(通称:技適)を取得することを義務付けています。電波を発する機器であるドローンも当然ながらこの規制対象となるため、「技適」認証を取得していないドローンを日本国内で使用することはできません。

民法による規制

土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。

(民法第207条)

民法第207条では、土地所有権の範囲がその上空にも及ぶことを明示しているため、私有地の空域に応じて無断でドローンを飛行させることはマナーに反します。これはあくまでも民事上のルールですが、トラブルを回避するため、私有地においてドローンを飛行させる際には、必ず土地の所有者や管理者からの許諾を得るようにしましょう。

また、一見すると公共施設であるかのような印象がある鉄道関連施設や神社仏閣等も私有地であるため、これらの場所において無断でドローンを飛行させることは避け、必ず所有者又は管理者からの許諾を得るようにしてください。

飛行のために必要となる手続き

航空法においては、ドローン飛行について、許可制と承認制を併用して規制を行っています。なお、許可とは法令により禁止されている行為を特定の場合に解除する行為を指し、承認とは承認権限のある機関が他の機関や人の行為に与える同意のことを指しますが、ここではその違いを深く考える必要はなく、手続きに違いがあることだけを確認するようにしてください。

航空法に基づく許可

無人航空機の飛行の許可が必要となる空域
無人航空機の飛行の許可が必要となる空域

空港周辺緊急用務空域150m以上の上空及び人口集中地区の上空でドローンを飛行させようとする際は、管轄の空港事務所に対して申請を行い、その許可を受ける必要があります。

空港周辺の規制範囲には、全ての空港から6km以内の区域が含まれます。また、以下の空港については、周囲24km以内という広範囲においてドローンの飛行が規制されています。

地域空港
首都圏羽田空港、成田空港
北海道釧路空港、函館空港
東北仙台空港
中部中部空港
関西関西空港、大阪国際空港
四国松山空港
九州福岡空港、長崎空港、熊本空港、大分空港、宮崎空港、鹿児島空港
沖縄那覇空港

申請方法については、各空港により異なる場合があるため、周辺でドローンを飛行させる予定があるときは、管轄の空港事務所に対して問い合わせをして確認するようにしましょう。

航空法に基づく承認

承認が必要となる飛行の方法
承認が必要となる飛行の方法

以下に該当する場所又は方法によりドローンを飛行させようとするときは、国土交通省の東京航空局又は大阪航空局に対して申請を行い、その承認を受ける必要があります。

  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人や建物と30m未満の距離での飛行
  • 催し場所での飛行
  • 危険物輸送
  • 物件投下

申請方法

許可や承認を受けるための申請は、飛行開始予定日の10日前までに行う必要があります。申請から許可又は承認の処分が下りるのが約10日とされているため、実際には1ヶ月前までには申請することをお薦めします。

申請内容に不備がなく要件をみたしている場合には、無人航空機の飛行に関する許可(承認)書が送付されます。

個別申請

ドローンの飛行日や飛行経路が事前に確定している場合において、都度行う申請方法です。比較的申請はスムーズに進む傾向にありますが、スケジュールなどの柔軟さはあまりありません。

包括申請

期間や飛行経路に余裕を持たせたい場合には、期間や飛行経路を包括的に申請します。なお、期間が3ヶ月を超える包括申請により、許可又は承認を受けた場合は、許可又は承認の日から3ヶ月ごと及び期間終了後に、飛行実績を報告する必要があります。

★期間包括申請

同一の申請者が、最長1年間問一定の期間内に繰り返しドローンを飛行させる場合に利用される申請方法です。

★飛行経路包括申請

同一の申請者が、ある程度広範囲においてドローンを飛行させる場合に利用される申請方法です。飛行範囲は想定しているものの、飛行経路を特定することができないようなケースでも申請することが可能です。

許可及び承認の基準

一般的に禁止されている事項について許可や承認を受けようとするわけですから、初めてドローンを取り扱うケースでは申請が通らないことはご理解いただけると思います。許可を受けるためには10時間以上のドローンのフライト実績承認を受けるためには事前に訓練をした実績を示すことが求められています。

まとめ

新しい機器や便利なツールが現れると、それに伴って新たな問題が生ずるのが世の常です。ドローンを巡っては、まだまだ法整備が完全になされた状況とはいえず、これからも段階的な改正を経ることになるのは想像にかたくありません。

ドローンの飛行についてご不明な点やご不安な点があれば、申請代行を含め、弊所までどうぞお気軽にご相談ください。

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