産業廃棄物処分業許可│ゴミの中間処理と最終処分

現代社会における環境問題は、日本のみならず全世界的に重要な課題のひとつです。人間が社会生活を営む上でゴミの排出は避けることはできませんので、環境保全と廃棄物処理との問題は、一体的に推し進めていく必要があります。
このような多重的観点からも、事業として産業廃棄物を処理するために必要となる許可は、一般的な許可よりも更に高いハードルが課されています。また、産業廃棄物を処理する中間施設や最終処分場を運営するためには、前提として産業廃棄物処分業の許可が必要になります。
本稿では、取得するためのハードルが極めて高い産業廃棄物処分業許可の概要や手続きについて、ざっくり解説していきたいと思います。
目 次
産業廃棄物とは

産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生した廃棄物のうち、法令で定められた20種類の廃棄物に限定されています。このうち次の13種については、どの業種から排出されても産業廃棄物に該当します。
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラス、コンクリート
- 陶磁器くず
- 鋼さい
- がれき類
- ばいじん
残りの7種については、それぞれに指定業種という業種があって、その指定業種から排出される場合に限り産業廃棄物として処理されます。
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動物系固形不要物
- 動植物性残渣
- 動物のふん尿
- 動物の死体
産業廃棄物として処理されない廃棄物については事業系一般廃棄物として処理されることになります。廃棄物と産業廃棄物の定義については、以下の記事内でも詳しく解説していますので、ご確認ください。
産業廃棄物収集運搬業許可について
特別管理産業廃棄物
特別管理産業廃棄物についても上の記事内で触れていますが、その概要については、下記資料もご確認ください。

産業廃棄物排出の流れ

産業廃棄物の排出については、上のフロー図のとおりです。原則として、産業廃棄物を排出する各事業所がその処理責任を負いますが、一定の基準を満たした上で都道府県知事(政令市長)の許可を受けた事業者に委託することで産業廃棄物の適正な処理を行うことができるような仕組みが採用されています。そしてこの許可を受けて産業廃棄物の中間処理と最終処分を行う事業形態が産業廃棄物処分業です。
中間処理と最終処分
一般的には、破砕、切断、焼却、圧縮、溶融など、廃棄物の性状や形状に変更を加えることによって最終処分や再利用をしやすくするための工程を中間処理といいますが、何をもって中間処理というのかについては、各自治体の判断に委ねられることになります。
一方、資源化して再利用することが困難な廃棄物や、処理の過程で生じる残さ等を最終的に受け入れる施設のことを最終処分場といいます。つまり、中間処理とは、産業廃棄物の最終処分を行う前段階の工程であるということになります。
産業廃棄物処分業許可
産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、営業地を管轄する都道府県知事(政令市長)の許可を受ける必要があります。ただし、以下のパターンにおいては、この許可を受ける必要はありません。
- 自ら産業廃棄物を処分する場合
- 専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業とするもの
- 環境省令で定めるもの
廃棄物処理法には2つの許可区分があり、それぞれを定めた条項をとって、第14条許可と第15条許可と呼ばれています。産業廃棄物処分業には廃棄物の処理施設が必要になりますが、その処理施設が一定規模以上のものであると、第14条許可(産業廃棄物処分業許可)と併せて、第15条許可(産業廃棄物処理施設設置許可)も取得することが必要になります。
第14条許可 | 産業廃棄物処分業許可 |
第15条許可 | 産業廃棄物処理施設設置許可 |
本稿においては、おもに第14条許可である産業廃棄物処分業許可についてご案内していますので、第15条許可の産業廃棄物処理施設設置許可については、以下の記事内でご確認ください。
産業廃棄物処理施設設置許可について
手続きの流れ

上のフロー図は、大阪府における手続きの流れです。各自治体によって違いはありますが、どの自治体でもほぼ事前協議後の許可申請という数次の手続きが要求されます。また、処理施設の設置や変更についても、軽微な変更を除き、事前協議が必要とされています。
このほか、消防法、都市計画法、農地法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法等、関係法令の規定による許認可申請が必要となる場合があります。あらかじめこれら全ての手続きを行い、処理施設の設置・変更が完了した後に、ようやく産業廃棄物処分業の許可を申請することができるという流れになります。
事前協議


上の掲載資料は、大阪府における事前協議に際して添付する事前協議書の作成例です。各自治体によって様式が異なるほか、ケースによっても求められる書類や確認事項は異なります。詳しくは大阪府産業廃棄物事前協議取扱指針[PDF/259KB]をご確認ください。

許可要件
- 処分業を的確に行うことのできる知識及び技能を有すること
- 事業を的確に、かつ、継続して行うことのできる経理的基礎を有すること
- 欠格要件に該当しないこと
知識及び技能
財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会を受講し、修了証を交付されていることが必要となります。修了証の有効期間は、新規の場合は5年、更新の場合は2年となります。
特別管理産業廃棄物(感染性産業廃棄物及び廃石綿等を除く)の処分に当たる場合には、必要な性状の分析を行う者が、特別管理産業廃棄物について十分な知識及び技能を有する者であることが必要です。この場合における分析を行う者の資格及び経験は、以下のとおりです。
- 大学(短期大学を除く)、専門学校等において、理学、医学歯学、薬学、衛生学、工学、農学もしくは獣医学の課程またはこれに相当する課程を修めて卒業した後、6か月以上水質検査又はその他の理化学検査の実務に従事した経験を有する者
- 衛生検査技師又は臨床検査技師であって、6か月以上水質検査またはその他の理化学検査の実務に従事した経験を有する者
- 短期大学、高等専門学校において、理学、薬学、工学、農学の課程又はそれに相当する課程を修めて卒業した後、1年以上水質検査又はその他の理化学検査の実務に従事した経験を有する者
経理的基礎
原則として、利益が計上できていること、自己資本比率が1割を超えていること、債務超過の状態でないことが必要となります。
欠格要件
申請者が以下の欠格事項に該当する場合は、産業廃棄物処分の許可は下りません。
- 成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
- 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 廃棄物処理法等の環境関連法や刑法に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(廃業した場合も同様)
- 法人で暴力団員などがその事業活動を支配するもの
- 暴力団対策法に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
許可申請手数料
申請手数料は、産業廃棄物指導課窓口での書類審査後に手数料納付窓口で納付します。
手続 | 新規申請 | 更新申請 | 変更許可申請 | 再交付申請 |
---|---|---|---|---|
産業廃棄物処分業 | 100,000円 | 94,000円 | 92,000円 | 1,500円 |
特別管理産業廃棄物処分業 | 100,000円 | 95,000円 | 95,000円 | 1,500円 |
必要となる書類
中間処理業の許可申請の場合、以下の書類を正・副本ともに1部ずつ提出します。
第1面〜第3面 | (特別管理)産業廃棄物処分業許可申請書 |
別紙11 | 事業計画の概要書 |
(特別管理)産業廃棄物の処分業に関する講習修了証の写し(修了日より5年経過していない修了証) | |
事務所及び事業場の付近見取図 | |
別紙7 | 事業開始に要する資金及び調達方法 |
法人 | 直前3年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別 注記表、法人税納税証明書その1及び確定申告書の写し(別表1、別表4) |
個人 別紙8 | 資産に関する調書 |
法人 | 直前3年分の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類(納税証明書その1及び確定申告書の写し(第1表、第2表) |
法人 | 定款又は寄附行為及び法人の履歴事項全部証明書 |
住民票(本籍の記載があるもの) 成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書 | |
別紙9 | 誓約書 |
別紙12 | 施設の概要 |
別紙13 | 最終処分場 |
別紙14 | 処分業務の具体的な計画 |
添付書類 | 施設の構造を明らかにする平面図、立面図、断面図、構造図及び設計計算書等 |
添付書類 | 施設の土地・建物の登記事項証明書及び地籍図(公図)、所有者が申請者と異なる場合は、使用の権限を有することを称する書類等 |
別紙15 | 環境保全措置 |
別紙16 | 処分後の処理方法 |
添付書類 | 中間処理後の残渣(産業廃棄物)を他人に委託する場合は、委託先(処分業者)の許可証の写し等 |
別紙17 | 分析設備の概要等(特別管理産業廃棄物のみ) |
添付書類 | 分析設備配置図、及び分析機器のパンフレット等 |
産業廃棄物処理施設の許可証の写し(政令第7条で定める施設の場合) | |
他法令関係に基づく許可証又は受理書の写し(大気汚染防止法、大阪府生活環境の保全等に関する条例、消防法、下水道法等の対象施設の場合) | |
許可更新及び事業範囲変更許可申請の場合は、現行の許可証の写し | |
その他行政官庁が必要と認める書類 |
住民票、成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書については、申請者、役員全員、発行済株式総数の100 分の 5 以上の株主又は出資の額の100分の5以上の額に相当する出資者全員(株主又は出資者が法人の場合は、その法人の登記事項証明書)、政令で定める使用人、法定代理人の分が必要になります。(発行日より3ヶ月以内のもの)
まとめ
産業廃棄物処分業の許可申請が、行政書士の取り扱う業務中でも最難関の手続きのひとつであることについては間違いありません。許可要件を記した法令の条文についても、「許可をしてはならない」「許可をしないことができる」という文言が並び、この点においても、許可権者である行政庁に、強い権限と裁量が与えられていることをうかがい知ることができます。
時間と費用を費やし、膨大な書類を揃えて幾度も協議を重ねたとしても、許可が下りないことも十分に想定されます。気軽に検討する事案ではなく、しっかりとした計画をもって申請に臨むようにしましょう。